ナレーション
(ラインナップの映像を流しつつ、)
「2013年、今年こそ不況から抜け出したい北海道経済、そこに希望の光が――
成長著しいアジアへ売り込む北海道ラーメン――
ロシアで受注に成功した巨額の国家プロジェクト――
海外へ果敢に挑戦する事で活路を開く企業が相次いでいます。」
コンクリートメーカー社長「逆に一歩海外に目を転じるとですね、スーパー成長産業なわけですよ」
リゾート企業社長「日本の社会というのは地球上で2%ですからね、あと98%のマーケットを私たちは積極的に取りに行こうと――」
♪ワールドイズマイン
ナレーション「北海道の厳しい環境で鍛えられ、世界的なヒット商品が産まれています。
伊藤社長「むしろ、まあ北海道こそ、独立って言ったらあれですけども、自分たちの足で立つという事を真剣に考えた方が――」
ナレーション「持ち前のフロンティアスピリットを武器に世界で戦う社長たち、その戦略から復活のヒントを探ります。」


<タイトルコール>
池田耕一郎「北海道クローズアップです。新年1回目の放送という事で、経済の面で北海道を元気にするヒントを探っていきたいと思います。早速私の後ろをご覧ください。
ラーメンに、巨大な橋で使われるコンクリート、パウダースノー、そして、バーチャルアイドルの初音ミク!
一見何の関連性も無いように思えるんですが、実は共通点があります。
それは、世界で高く評価されている『メイドイン北海道』という点です。
今後、日本の国内の市場の拡大は見込めません。よって、海外へ活路を見出す事が必要となります。では、どうしたらこの世界で戦えるのでしょうか? そのヒントがこの『メイドイン北海道』に詰まっています。まずは、北海道ブランドの強みを活かして世界に挑戦する企業の取り組みをご覧ください。」


○各企業の社長のインタビュー、会社紹介、海外での展開状況、人材育成方法など(※一部略)
<北海道ラーメンの会社 札幌 西山製麺> 西山隆司社長
<加森観光 留寿都村リゾート マレーシアからの団体客、アジアのイスラム客を呼び込む> 加森公人社長
<近藤公彦さん(小樽商科大学ビジネススクール教授)の説明>
<會澤高圧コンクリート株式会社> 會澤祥弘社長
<クリプトン・フューチャー・メディア> 伊藤博之社長
♪ワールドイズマイン
ナレーション「北海道の厳しいビジネス環境から生まれた人気キャラクター初音ミクです。アメリカロサンゼルスで行われたコンサートは5000人を動員。中国・ヨーロッパなどでも人気が沸騰しています。
産み出したのは札幌の<IT>企業クリプトン・フューチャー・メディアです。
初音ミクは歌詞やメロディーを入力するとコンピューターに歌を歌わせる事が出来る、音声合成ソフト」
♪かえるのうたが~




ナレーション「伊藤博之社長は、今年、英語で歌う事が出来る英語版の発売を計画。世界でさらなる市場の拡大を目指しています。」
伊藤社長「地方だからビジネスとしての発展性が弱いだとか、今後の展望が乏しいだとか全く無くて、初音ミクの創作が広がっていく、日本国内だけでなく世界規模で広がっていく事によって僕らは世界規模でビジネスをしていく。」


ナレーション「なぜ、地方都市から世界的なヒット商品を生み出す事が出来たのか。
そこには広告宣伝や商品開発のパートナーが少ないという北海道の不利な環境を逆手に取った戦略があります。」
ナレーション「(ソフトのパッケージを映しながら)それがこちら。パッケージに書かれたキャラクターを自由に創り変え、公開することを認めたのです。」
♪みんなみくみくにしてあげる♪
ナレーション「(最初のキャラデザを映しながら)これが元々の初音ミク。
それが子供のようになったり、グーッと大人びたり、ファンは競って自分だけの初音ミクを創るようになりました。その歌声に合わせた映像作品がインターネット上で増殖し世界に発信されました。
積極的に広告をしなくても新たなファンが生まれ人気が爆発的に広がったのです。」




伊藤社長「過去のしがらみに縛りついてしまって先に進まないという状況は北海道には無いわけですよ。どんどん新しい物を取り入れて新しいビジネスをしていく、新しい事にチャレンジしていくという事を北海道でなら出来るのだから、むしろ東京とかよりも全然可能性は高いですよね」


○再びスタジオ
池田「いやー、今、初音ミクはすごい広がり様ですね。先日、日本赤十字社の募金活動でも採用されていまして、もうファンだけではなくて、一般の隅々まで拡がりつつありますよね。」
近藤「北海道だけでなくて日本を代表するキャラクターになっていますよね。あの事例でもですね、非常に特徴的なんですけども、一緒に価値を創りだす、「価値共創」という考え方があるんですよね。」
池田「かちきょうそう?」
近藤「はい」
池田「『競り合う』という字ではなくて、『共に創る』という―…」
近藤「…という考え方なんですよね。今まではですね、売り手が価値を創って、その価値を買い手が受けるだけだ、という考え方だったんですけれども、初音ミクの例はですね、初音ミクのファンが、ユーザーが自分なりの初音ミクを創っていくと言う事ですよね。売り手だけでなくて顧客も一緒になって価値を創っていくという考え方、これが今の時代のトレンドで非常に重要なキーワードだと思います。」
池田「この価値共創と言うのは、他の分野でも今行われているんですか?」
近藤「特に<IT>系は強いんですけれども、人気の料理のレシピの投稿サイトがあるんですけども、こちらはですね、そのサイトに自分なりのレシピを投稿するんですよね。で、それをこうお客さん、ユーザーが料理するんですけども、ランキングもあったりするんですよね。人気ランキングの料理を作ったり、あるいは、自分の投稿したレシピがランキング上がると嬉しいですよね。単なる、サイトから料理の作り方を提案しているわけでなくて、お客さんも、ユーザーも提案するという、これも価値共創の大きな例ですね。」
池田「お客さんと共に創っていく価値共創、まさにこれからの経営においてキーワードになってきそうですね。で、その<IT>企業の社長はですね、北海道というシガラミの無い環境だからそういう発想が出来たのではないかという風にお話をしていました。東京だったら出来なかったんでしょうかねえ?」
近藤「例えばですね、ビジネスの習慣・慣習であったり、人的ネットワークだったり、取引先とのネットワークであったり、そういうこうまさにシガラミですよね。そういうような中で新しい事をやり出そうとした時に、摘まれてしまうという可能性があったりすると思うんですよね。それがこう地理的に北海道という離れている場所にある事でそういった意味でのシガラミから解放されているという事で、より自由な価値の創造が出来るのではないでしょうか」
池田「厳しい経営環境、まさに逆手に取ったという事ですが、もう一つ、今度は厳しい自然環境を逆手に取ったコンクリート会社、寒冷地技術をどんどん伸ばしていきました。」
近藤「まさに北海道ならではの企業だと思いますよね。こういった厳しい環境の中で培われたコンクリートに関する技術、それを引っ提げて強みとして海外に出て行っているという良い例ですよね。」
池田「今はコンクリートの素材を売っているわけですが、これ、考え方を膨らませて行きますと、何かもっと他の寒冷地技術も組み合わせる事も出来そうですね」
近藤「そうですね、北海道の寒冷地にあった様々な技術があるはずで、様々な企業がそういった技術を持っているはずなんですよね。それらをこう持ち寄ってオール北海道としてトータルでパッケージとして道外であったり海外に売っていく、そういった姿勢・アプローチ、もう非常に大事じゃないでしょうか」
池田「そのシステム、都市計画のシステム全体もこう売れるかもしれませんね。そして、まあ、その何れの企業も本当にこの厳しいとも言われがちな北海道の環境をですね、逆手に取ってそれを活かしました。」
近藤「あの北海道は少子化であったり高齢化であったり、あるいは所得の伸び率が低いであったり、そういった逆境って言われるんですが、課題先進地域だと言われるんですが、私はむしろチャンスだと思うんですよね。そう言った課題を先に解決するビジネスあるいはビジネスモデルを作り上げる事が出来れば、それを強みとして道外あるいは海外へ行くという事が十分可能だと思うんですよね。」
池田「付加価値と課題解決能力、この2つがキーワードになってきそうですね。今日はどうもありがとうございました」


>北海道クローズアップ「放送記録」
人口減少、デフレ、円高・・・・。
長期低迷からなかなか抜け出せない北海道経済。
公共事業頼りで中央への依存度が高いと言われてきた北海道ですが、 持ち前のフロンティア・スピリットで、軽々と世界に打って出て、挑戦を続ける社長たちがいます。
2013年最初の北海道クローズアップでは、北海道に基盤を置きながら、世界の第一線で活躍する企業経営者たちを取材。
その戦略を見ていくことで、2013年、北海道が元気になるための指針を探っていきます。
>NHK札幌放送局「北海道クローズアップ」

関連ページ
>北海道のNHK総合「北海道クローズアップ」にクリプトン社が出る…かもな件
