【オープニング・トーク=背景に机とイスが並ぶ場所】
タモリ 「毎度おなじみ、流浪の番組『タモリ倶楽部』です。え、インテリア業界ではいま、北欧家具の"IKEA"ってのがなかなか賑わっています」
松尾貴史氏(以下「松尾」): 「(左から入ってくる)今日はね、もの凄く貴重な、すっごく貴重なタンスに触れることができるんです」
タモリ 「タンス・・・?」
近田春夫氏(以下「近田」) 「ちょっとね(聞いたとこでは)状態のいいものがね、もう世界でも・・・数台しかないと言われているタンスなんです」
松尾 「音出すんです」
タモリ 「タンスが音を出すの?」
松尾 「音出す・・・」
近田 「これは、モーグ博士っていう・・・知ってます?・・・モーグ博士?」
タモリ 「ええ、モーグ博士知ってます」
近田 「シンセサイザーの開祖と言われている・・・」
タモリ 「あの人タンスを作っていたの!?」
近田 「作ってたの!」
タモリ 「へ~!知らなかったそれ!!」(スタッフ、小芝居に爆笑)
松尾 「今日はね?第一人者、日本の開祖と言ってもいいですよね?」
近田 「そうなんですよ。その開祖がね、私の学校の先輩でもあるんですよ」
タモリ 「あそうなの?タンスから音を出す・・・開祖?」
近田 「開祖、開祖!」
松尾 「慶応の大先輩。・・・タモリさんにとっていうと、寺山修二みたいなもの」
タモリ 「へ~!(寺山修二氏のしゃべり方を真似する)まああのね、タンチュから音を出すというね・・・」(寺山氏のしゃべり方を知ってるスタッフ爆笑)
ナレーション(以下「ナレ」) 「アメリカの電子工学博士、ロバート・モーグが開発した元祖アナログ・シンセサイザー『モーグIIIC』、通称『タンス』。今回は今も現役で動く貴重なタンスに触れて、電子音楽の歴史を感じましょう。温故知新シリーズ①初期型モーグシンセ『箪笥』で音を作ろう!」
【スタジオ入り口扉の前】
松尾 「さあこの扉の向こうに初期シンセサイザー『タンス』、それからシンセサイザーの、日本での第一人者、巨匠がお待ちでございます!」
タモリ 「ほお!」
松尾 「では入ってください!
タモリ 「じゃいいですか?」
松尾 「どーんと開けてください」
タモリ 「じゃドーンと・・・(扉を開ける)」
(砂嵐の様なノイズがうねる音が聴こえてくる)
近田 「おおっ!凄いことになってきた!」
松尾 「なんか不思議な音が・・・!」
(3名、タンスに近づいていく。タンスのパネルを操作する人の姿あり)
タモリ 「(歩いて近づきながら)巨匠ですか・・・?」
松尾 「凄いでしょう?日本のシンセサイザーの第一人者・冨田勲先生です!」
冨田 「どうも」
タモリ 「どうも。宜しくお願いします」
ナレ 「作曲家・冨田勲。1950年代から数多くのテレビ番組から映画、アニメーションなどの音楽を手がけ、70年代以降は日本人として初めてシンセサイザーを作品に導入し、世界的なヒットを連発。輝かしい受賞暦を持つ巨匠なのである・・・」
(タンスの前に全員着席している)
松尾 「今日は冨田先生のサポートとして、先生のお弟子さんでもあり、『4人目のYMO』とも呼ばれた音楽家・松武秀樹さんにもお越しいただきました。どうぞ宜しくお願いします」(一同「宜しくお願いします」&拍手)
松武秀樹氏(以下「松武」) 「宜しくお願いします」
冨田 「お弟子さん、たってコードのつなぎ方教えただけだよな?」
松武 「ああっ、はい・・・(笑)」
冨田 「あれでもう弟子っていうんですから」
タモリ 「でもコードが命ですからねこれね」
松尾 「コード3年、ひねり8年って言われてますからね」
松武 「ありがとうございます」
冨田 「あんなの繫げゃあいいだけだよ(笑)」
タモリ 「繫げりゃいいって・・・(笑)」
松尾 「それが難しそうですよね・・・?」
ナレ 「冨田勲、『モーグと私』」
松尾 「まずこちらからお話を伺いますね。グワン!(フリップのめくりをめくる)『日本で始めて箪笥を購入』。もちろん(箪笥というのは)モーグシンセのことであります。これはどこでお知りになったんですか?」
冨田 「大阪万博の・・・パビリオンの仕事をしていたんですけども、割と暇があったんで街の輸入レコード店の中で飾ってあった『スイッチト オン バッハ』というのがありまして・・・」
タモリ 「あっ、『スイッチト オン バッハ』ってのがありましたね・・・」
冨田 「で、ああ!こういうのがあるのか、と・・・」
ナレ 「『スイッチト オン バッハ』は世界で初めてシンセサイザーのみで演奏され大ヒットしたアルバム」
冨田 「まあそれまで、もちろんシンセサイザーってのがなかったから、オーケストラの譜面書きやってたんですね。で、やっぱりね、行き詰ってですね」
タモリ 「行き詰ってですね・・・(笑)」(一同笑い)
冨田 「何に行き詰っていたかっていうとね、絵とか彫刻の場合は自由な・・・ね?金粉を使おうが石炭がら使おうが、イメージに合えば何使ったっていいんです。ところがね音楽の場合はフルート、オーボエ、トランペット、ホルン・・・。これはもうワグナー時代から変わってないんですよ。そうするとね、譜面書いててこれ以上やりようがないし、もう既に誰かがやってんじゃないか、みたいな考えがこう頭の中にあって。そんな時にモーグ・シンセサイザーに出会ったんです。つまり扱う人間の発想次第によってはいかような音も出ますよ、というわけですよね」
ナレ 「1971年、知人を介して個人輸入にこぎつけます」
松尾 「いくらぐらいしたんですか当時?」
冨田 「ああ、あのー、今だったら1/4か1/5で買えたんですけど当時で1000万」
松尾 「1000万!」
冨田 「というのはドルが360円だったの・・・」
松尾 「(一同騒然)ただ物価に換算して、70年ていうと、大学(卒)の初任給が4万くらい・・・ですよね。それはとてつもなく大きな・・・不動産くらいのお金・・・。どうやって工面なさったんですかそのお金は?」
近田 「稼いでいらっしゃったんじゃないですか、既にそのころは?」
松尾 「あそうなんですか!」
冨田 「いや稼いじゃいないですよ!その当時はやっぱりヒット曲ひとつでもふたつでも作っていりゃいいんですけれども、やっぱり映画音楽とかテレビの音楽をやってましたからね、それは限界ありますよ。だから借りなきゃとても・・・非常に危ないはずですね。」
一同 「ハハハ・・・」
冨田 「でもね、これはちょっと・・・松武君にもこれはとても勧められない。でもね松武君はね、スポンサーと言うかパトロンというか、そういうのがあったんですよ。」
タモリ 「へえ」
冨田 「僕はもう(その時)40近かったけど、松武はまだ19歳だったからね。なんで・・・(松武氏の方を向いてしみじみ)恵まれたよな~?」
一同 「ハハハ・・・」
ナレ 「高価なモーグシンセがアメリカから空輸されてきましたが、なぜか空港で足止め。その理由は?」
冨田 「(こちらが)『これは楽器なんだ』って言うんだけども(税関が)『どう見ても楽器じゃない』って・・・」
松尾 「(笑)当時の反応だとそうですよね~?」
冨田 「それで・・・モーグさんの会社に『こういうことでトラブってるから大至急著名なミュージシャンが演奏しているところの写真を送ってくれ』と・・・言ったんだけど、割とルーズなの。なかなか来ないんだよ」
ナレ 「一ヶ月経って届いたのがELPのキースエマーソンがモーグシンセを演奏している写真。これを税関職員に見せてようやく楽器であると認めさせることができました」
松尾 「ようやくモーグ・シンセを手に入れた冨田先生。ここでまた、新たな問題が・・・こちらでございます(フリップめくる)。『使い方がわからな~い!(←おバカな言い方で)』」
冨田 「いま楽器買うと懇切丁寧な説明書が付いてくるんだけど、それが何にもなくて。結局ね(タンスのパネルを示しながら)これバラバラの、全部独立したモジュールなんですよ。だからここへ何ボルト投入したらフィルターがどれだけ、何ヘルツの音がピーピー鳴るか、とかそういう説明だけなんです」
松尾 「最初に出た音はどんな音でした?」
冨田 「とにかく雑音か不安定な音しか、それしか出ませんから、だから・・・大変な鉄くずをアメリカから買い込んじゃったなー、と・・・」
一同 「ハハハハハ!」
ナレ 「手探りでモーグと格闘し、1年4ヶ月をかけて制作した『月の光』は、アメリカ・RCAレコードから発売されるや世界的な大ヒット」
タモリ 「これ俺すぐ買いましたよ。聴きましたよ」
松尾 「これが・・・冨田先生の・・・(『月の光』のLPレコードのジャケットを提示。次に裏側も見せて)。後が・・・冨田先生の・・・」
タモリ 「(ジャケットを示して)この写真ですね?」
松尾 「あこれですね(写真の冨田氏の背景にあるモーグシンセを示して)これがタンスだったんですね。」
冨田 「そうです」
タモリ 「でも先生若いですね!」
冨田 「そりゃ若いですよ!そりゃそうでしょ・・・(笑)」
一同 「ハハハハハ!」
ナレ 「タンスの基本的な使い方を学ぼう。」
松尾 「実は今日使用させていただいているモーグシンセは、松武さん所有のものなんですよね?」
松武 「あはい、そうです。」
松尾 「で、『タンス』という名前も松武さんがお付けになった・・・」
松武 「はい。私がYMOのツアーをやり出したのが79年でした。でこれを世界中に持っていったんですよね。そしたら実はここの角がですね、ぶつかってこう、一回目のツアーのときに傷だらけになっちゃったんですよ。で、このなんか・・・もう錆ちゃってるんですけど(タンスの角につけられた金具を示して)こういうものをつけまして、そうするとよく桐のタンスがありますよね、それをまあメンバーとかスタッフが、『あこれはタンスだ』と・・・」
タモリ 「音の引き出しだ」
松武 「そうそう」
松尾 「『音の引き出し』。うわー(うまいこと言う!)」
タモリ 「うまいな~」
松武 「(笑)嬉しいですね、そのとおりなんですけれども」
松尾 「『音の引き出し』!この初期型のシンセはどういう仕組みで音が出るのでしょうか・・・(『実演をお願いします』のフリ)」
松武 「はい。えーと実は3つの要素なんですよ、音を出すというのは」
ナレ 「まずは基本となる音を出すオシレーター」
松武 「(タンスの右下あたりのパネルを示して)実はここにこう、同じものがたくさんこう並んでいますけれども、これ全部、よく見ると"OSCILLATOR(オシレーター)"って書いてあるんです」
タモリ 「発振器?」
松武 「発振器です」
タモリ 「ここで元々の音を作るんですよねぇ?」
松武 「そうです。ここ(の部分)が(そういう役割の)発振器ですね。でここにですね、よく見るとサイン波とか、TRIANGLE三角波・・・SAWTOOTH・・・これはあのーノコギリ波」
タモリ 「ノコギリ波」
松武 「で最後のやつのはパルス」
タモリ 「はー。あ、それぞれの波形が違うんですね」
松武 「そうです。それでちょっと音を出してみると・・・(パネルを操作、ピーという音が出る)」
タモリ 「これサイン波?」
松武 「サイン波です。でこれで(パネルのプラグをサイン波から三角波の位置に差し込む。音が変わる)・・・これで三角波・・・ちょっと音が硬くなる。そして(次にノコギリ波の穴にケーブルのプラグを差し込む)ノコギリ波。で最後にパルス(パルス波の穴にプラグを差し込む)。でパルスは(波形の)幅を変えることが出来ますんで(パルスのツマミをグリグリ回す。音がツマミの角度に合わせて変わる)」
近田 「ああ、面白い!」
タモリ 「なるほどなるほど」
ナレ 「次に音質を調整するフィルター」
松武 「サイン波だと分かりにくいんでノコギリ波で。これをハイパスフィルターに通してみます。(ハイパスフィルターのツマミを回して値を上げる)これで(波形の)下(部分)が切れてます。(音が聞こえにくくなっていく)でまた戻してやると・・・。(値を下げていく。音が聞こえてくる。次に素早くツマミを右左に往復させて回す。音が素早く聞こえてきたり聴こえにくくなったり)」
松尾 「おい蚊が飛んでるぞ!(笑)」
松武 「そうそう(笑)そういうことです。これがハイパスフィルター。今度はローパスやってみます(ローパスフィルターのツマミを回す。音がこもっていく)。これは今度は下が通過するんで(波形の)上が切れてます」
タモリ 「なるほど。(手作業の様子を見て)はー・・・アナログですねぇ」
松尾 「アナログですね」
松武 「でこのローパスフィルターの方には、シンセサイザーらしい、実はひとつの装置が付いてます。いわゆるフィードバックみたいな装置なんですけれど、これを回すと・・・。("REGENERATION(リジェネレーション)"と書かれたツマミを回す。ミョ~という音になっていく)」
タモリ 「はー!」
松武 「シンセサイザーらしい、よく(聴く)・・・」
ナレ 「最後に音量を増幅させるアンプへ」 (ただしアンプ部操作の実演はOAなし)
近田 「アナログ・シンセって基本的にこの・・・あれですよね、方式って変わってないわけですよね・・・」
松武 「その通りです。今のシンセサイザーももう・・・この技術というか考え方が全部踏襲されてます」
近田 「意味としては全部これ(=タンス)ですもんね」
松武 「このまんまです」
ナレ 「冨田先生が作った音を聴こう。その1『口笛』」
冨田 「まずあのー(自分の口を尖らせて息だけを出す)こう吹きますのでね、そうすると空気の吹き抜ける音ってのはホワイトノイズを元にしてそれを共振させるわけですね。実際(音響的には本当の口笛も)そうですけどね」
(松武氏が隣で忙しくタンスを操作。シュー、シャーというノイズ音を鍵盤を押して確認)
松尾 「これはまだ口笛じゃないですよね」
冨田 「ええ」
タモリ 「口笛が鳴る前は"ヒュー(口で息を出して鳴りそこねの口笛を出す)"という音ですよね」
冨田 「その音です」
松武 「(鍵盤を押してシューというノイズを出し比較)」
タモリ 「要は(今出したノイズの)これに"ピー(口笛を鳴らす)"がうまく(重なれば)・・・」
冨田 「共鳴をね」
タモリ 「混じってるわけですよね、絶対ね?」
冨田 「そうです」
松武 「・・・なので、先ほどちょっと僕が説明しましたこのフィルターの共振、発振の部分、あそこを利用するんで・・・。(リジェネレーションのツマミを回す)共振する部分(の値)を上げます。そうするともう・・・(鍵盤を押す。ヒシュー、ヒピーという鳴りかけの口笛の音に近づく)」
松尾 「ちょっと音が出かけの感じですね」
松武 「ええ。こんな感じでなっていくんですけれどもね。(鍵盤押しながらパネル操作)これですとまだちょっと口笛の雰囲気が全然作れていなんで・・・」
タモリ 「まだもうちょっと・・・」
松尾 「出てないですね」
松武 「やっぱビブラートを付けたい、ですよね」
冨田 「(作業に割って入る)ちょっと、ピンクノイズはもうちょっと下げた方がいいんじゃないの?(口で鳴りかけの口笛をまねる)"シュピー"な感じになっちゃってる・・・」
松武 「あふはすははい・・・(急いで指示を実行、調整)」 (たぶん「あっそうですねはい」と言っている)
松尾 「ハハハ・・」
松武 「(こんな感じで弟子をやっておりました、の様にタモリらの方に向いて一瞬直立。さらに調整)で吹いたら少し経ってからビブラートがかかる、という風にしたいんで、そういう仕組みをこの時間的な変化を与える装置でやる(ビブラートを掛ける部分のツマミ=LFOのスピード、デプスなどを指差す)」
タモリ 「口笛うまいヤツってよくやるよね?ピーイ~イ~イ~イ~・・・(ビブラートを再現&笑)あれ嫌なヤツだよね?」
一同 「(笑)」
松尾 「いやいや・・・うまいヤツでしょ?嫌じゃないですよ(笑)」
松武 「(ビブラート調整完了。鍵盤を押して音を鳴らす)こんなですね」
一同 「ほーなるほど」
冨田 「ちょっと共鳴がイマイチ・・・」
松武 「ちょっと共鳴がイマイチ(笑)・・・すいません(急いで調整)」
タモリ 「たらし込みみたいな感じ」 (注1:たらし込み=幽霊が出るときの音)
松尾 「たらし込み?計算外の音が・・・(笑)」
松武 「(鍵盤押して何度か音を確認)」
冨田 「うん・・・あっ近くなった!」
松武 「それで今度は(口笛の奏者が)音程を探る雰囲気・・・下からヒュゥッとしゃくり上げる(感じ)。今日の場合はこのポルタメントという装置を使って出してみます(ポルタメントのツマミを回して鍵盤を弾く。音階がなだらかに変化)」
タモリ 「あーなるほど」
冨田 「(音階を)下へ下げる時には(ポルタメントを)切った方が・・・上に上げる時に・・・」
松武 「(指示通りに実演して鳴らす)」
一同 「あーホントだ」
ナレ 「完成形がこれ」(月の光「アラベスク第1番」が流れる)
松尾 「上手な口笛ですね~」
近田 「これは手でお弾きになったんですか?」
冨田 「そうです。全部手ですね。それよりも何回もやり直しましてね。僕はキーボードは下手くそなもんですから・・・」
一同 「ははは・・・」
松尾 「(笑)そんなことはないと思いますけどね・・・」
ナレ 「その2、鐘」
(冨田氏自身がモーグのパネルを黙々と調整。サイン波の音程がゆっくり上下する中で、全員、音の完成を待機しつつおしゃべり)
松武 「(笑いつつタモリらに)何をやってるかわかります?」
タモリ 「わかりますわかります」
松尾 「(笑)宇宙と交信・・・」
松武 「ははは・・・倍音を・・・」
タモリ 「倍音を重ねていくんですよね?」
松武 「そうです。倍音を構成している最中なんです」
タモリ 「そのままレベルも・・・」
松武 「そうです」
(冨田氏調整でホイッスルの様な持続音が鳴りっぱなしになっている。)
冨田 「これで・・・ちょっと音を切ってみてくれますか?」
松武 「はい(松武氏に調整を交代する)」
冨田 「カーンっていう感じ」
松武 「カーンっていう感じを・・・」
冨田 「うん、エンベロープをかけて。するとね鐘の音になる」
松武 「(調整後、鍵盤押して音を確認。鐘に近い音になる。が・・・)」
冨田 「あれ?(何か違うらしい)」
松尾 「金属音っぽい音になりましたね」
冨田 「(再び自分が調整。もう一度持続音に戻す)ふふ(笑)・・・ちょっと僕もわかんなくなっちゃったな」
一同 「ははは・・・!」
近田 「(笑)最高だよね~」
冨田 「(パネルをいじりながら)これが最高の倍音だからー・・・(調整の方法を松武氏と確認中)」
近田 「(松尾に)この人がわかんなくなるんだったらさ、他の人がわかんなくなるってのは許されるんだと思うんだよね」
松尾 「うんうん」
冨田 「(鍵盤を押して音を確認中。鐘の音らしくなるが、ややまだ違う感じらしい)」
松武 「(タモリらに、モーグシンセの調子について)ご機嫌斜めになっちゃう時があるんです・・・」
タモリ 「そんなことがあるんだ!(笑)アナログな・・・・」
松武 「(笑)あるんです・・・。不思議なん・・・」
冨田 「夜中にこれが起きると困るんだよねぇ!締め切りが迫って・・・」
一同 「ははは・・・」
松武 「(さらに調整後、鍵盤押して音を確認。コーン!という音。冨田氏は不満そう)
近田 「でも全然これで(鐘に)聴こえるよね?」
タモリ 「うんうん聴こえる」
冨田 「まあ・・・・まあこれで・・・(松武氏に)聴こえるそうだから・・・(諦め)」
一同 「ははは・・・!」
ナレ 「完成形はこちら」(月の光「沈める寺院」の鐘の部分)
松尾 「でも・・・(まさに)鐘でしたね?」
タモリ 「うん、ほんとにそう」
ナレ 「その3。パピプペ親父」
冨田:「ほんとはね、僕はモーグにしゃべらせようと思ったんですよ。それがねぇ、パ行しかどうしてもできなかったの。いまのボーカロイドの初音ミクからしたら、極々初期の話で・・・」
松尾:「初音ミクまで(笑)・・・でも至る訳ですよね?その辺までね」
近田 「その延長線上にあるってことでしょうね?」
松尾 「そういうことですよね~」
松武 「先ほどはノイズでしたけど、今度はオシレーターをひとつ・・ノコギリ波、というのを使ってやります。」
(松武氏がパネルを調整。音を出すとモワーという音)
松武 「こういうことですね。で、もうちょっと。ひとつだけ今までの作り方と違うのは、ここにある、アナログのシーケンサーを使ってやります。」
冨田 「口腔の中のパとかポとかという(口の中の空間の)広さをこれで・・・(パネルの中のアナログのシーケンサーを指差す)」
松武 「これでコントロールするんです」
冨田 「うんそうね。フィルターがあるから、そういう状態を作る・・・」
松武 「(鍵盤で音を確認しつつパネルを調整。パオ、パオという音になっていく)」
冨田 「短すぎる」
松武 「短すぎますか」
冨田 「いやその、ちょっと、音そのものは(いい)・・・(各ツマミの設定のチェック)これはいいんだよな。これが・・・(ひとつのツマミを回す)パッと切れちゃうといいんだけどな・・・(以降黙々と自分で調整を始める)」
ナレ「音作りになると決して妥協しない冨田先生。完成形はこちら」(月の光「ゴリウォーグのケークウォーク」)
松尾 「すごく楽しそうな人たちがいっぱい集まってる感じ・・・」
タモリ 「いやよくこんな感じの親父いるよ」
近田 「いるの?ほんといるんですか?」
タモリ 「いるよ?♪キミノモノダッテ、オレノモノダッテ、ミテナイモン~・・・(笑)あるんだよそんな親父、いるいるいる!」
一同: 「(爆笑)」
ナレ「ここに巨匠へあるお願いが・・・」
松尾 「先生、お笑い番組とかご覧になったことはありますか?」
冨田 「ええよく見ますよ」
松尾 「あそうですか!あの、往年のお笑い番組にはですね、最後のオチの音っていうのがあるんですが」
冨田 「あ。ありますね」
松尾 「ありますよね!変なお願いなんですけどそれをシンセサイザーで作っていただくことはできないかな、という(笑)お願いなんですが・・・」
ナレ「巨匠と弟子が、オリジナルのオチ音を作る」
松尾 「何もなく・・・参考資料がないとお困りになるかもしれないので、定番のオチ音というのをいくつか聴いていただきますんで」
冨田 「はい」
オチ音1 「♪パッ、パッ(ブラスで音階はファとラ#)」
松尾 「チャンチャンという・・・続いてはこちらです」
オチ音2 「♪た~ら~らっ(ブラスで音階はラ#、ファ、ラ#)」
松尾 「はい。これもよく聴きますね。そして最後」
オチ音2 「♪ポパパパッパパッ (ブラスで音階はラ#ドレド、レラ#)」
松尾 「(笑)マヌケな感じ」
松武 「僕、コレが一番好きなんです」
松尾 「(笑)あは、そうですか。ちょっと複雑化してますね」
松武 「(冨田氏に)先生じゃ僕が・・・」
冨田 「おお~っ、いいよ!」
松尾 「じゃあフィクサーから・・・」
松武 「やっぱりちょっとオシレーターで激しい・・・激しいっていうか一番強い音を作りたいんで・・・鋸歯状(きょしじょう)波!ノコギリ波ですね。(鍵盤を押しつつパネル操作でテキパキ音作り)でやっぱり面白い音を作りたいんで共振させて・・・(音がミャオミャオとなる)ミャオミャオという・・・」
松尾 「は~コミカルですね!」
松武 「なおかつフィルターになんか違うオシレーターも入れてしまう・・・(ケーブルをフィルターモジュールに差し込みツマミを回す)なんかちょっと速め(の音)のやつを入れちゃった方がいいんじゃないかと・・・」
タモリ 「へ~(まじまじとパネルの操作を眺める)」
松武 「(ミャオの音に重ねてスイープして上がる高い音を加える)こんな感じで(鍵盤押す)」
一同 「(笑)ハハハ!」
松武 「こうやれば・・・(高い位置の鍵盤を押すとどこかに飛んでいくようなスイープ音)」
タモリ 「おお!いいですね」
近田 「いい。もう素晴らしいと思います」
松武 「そうですか」
冨田 「もっと音程、音階低いヤツを・・・」
松武 「あ、もっと低いヤツ・・・(鍵盤の低い位置を押す。スイープが一度上がって下がってくる音)」
タモリ 「あっいいですね!」
松尾 「うはは!今のいいですね!」
タモリ 「ああ~↑~っ↓、ていう感じですね。・・・(松尾へ)これで決定でいいですね?」
松尾 「あじゃこれで決定でいいですか?はい。じゃこれから未来永劫、タモリ倶楽部では・・・」
タモリ 「オチはこれを使う!」
松尾 「ええ、これを使うと」
松武 「(笑)あそうですか!」
タモリ 「・・・いやオチとかあまりないんじゃないか・・・?」
一同 「(爆笑)」
////CM////
空耳アワーへ突入、コーナー終了後・・・
ナレ 「せっかくなのでタモリ倶楽部オリジナルのオチ音を使ってみる」
松尾 「近田さんと会話をしますんで、私が何か振ったら近田さんにオチをつけていただいて・・・」
近田 「はい」
松尾 「それでさっきのオチ音を弾いていただけますでしょうか?」
松武 「はい。わかりました。」
松尾 「じゃいいですか?」
松武 「お願いします」
(コント『シンセサイザーを始める時期』のテロップ)
松尾 「近田さん」
近田 「はい」
松尾 「あの~、シンセサイザーって何歳ぐらいから始めるのがいいんでしょうね?」
近田 「そ~だね~難しい質問だけどね・・・僕の考えではね、二十歳からだね」
松尾 「えそんなに遅く!なんで二十歳からなの?」
近田 「だってさ、二十歳になるってことはさ、新成人じゃん」
松武 「(オチ音を弾く)」
タモリ 「・・・先生さっきと違うんじゃないですか?」
一同 「(爆笑)」
タモリ 「なんか変わってましたよね少し?(笑)」
松武 「(笑)すいません・・・あれ、何が変わってるんですかね・・・?」
冨田 「いや~(言いにくそうに)、そういうことよくあるんです・・・」
タモリ 「え、よくある!(笑)あんなことよく・・・」
冨田 「(出来たら)すぐやんないとダメだから」
一同 「(爆笑)」
冨田 「熱いうちにやらないと・・・(笑)」
-了-
【書き出し人から一言】
昔のシンセの音作りって「鮮度」が命なのね・・・。
追記: ↓ご指摘感謝。記述直し終了です。
- 2012/11/18(日) 11:19:09 |
- URL |
- どこかの書き出しのミク #IjwDb27o
- [ 編集]